モーターヘッドバンガーズの日記

英ロックバンドmotörheadに関する最新情報やレビューを掲載。メタルのライフスタイルを読むブログ。

ファスト化するギターサウンド:アンプの進化とインスタントサウンド

 メタルにおいて、「ファスト」と言うと、速くてかっこいいイメージだが、ここではネガティブな意味として使いたい。
 ファストフードは安くて早くていつも同じ味を提供する。ファストファッションは安くても最新の流行アイテムを手にすることができる。そこには手間や苦労がなく、簡単に手に入れられるが、大量生産品のどこにでもあるものだ。

 ここ10年か15年ほどの間に、メタルにおけるギターサウンドは均質化され、似たようなものばかりになったように見える。誰もが簡単にいい音を出せるようになったが、その反面、個性や差異は感じられにくくなった。筆者はこれをギターサウンドの「ファスト化」と呼びたい。あるいは「インスタント化」でもいいかもしれない。そして、その背景に考えられるのは「アンプの進化」だ。

アンプの進化
 ひと昔前までは、アンプだけでメタルサウンドを作ることは難しかったので、アンプの改造やセッティングのコツ、エフェクターの使用、パーツの交換といったさまざまな工夫や苦労があって、はじめて「いい音」を出すことができた。それぐらい音作りは難しく、苦心して作り上げたサウンドはギタリストの個性そのものだった。

 しかし、アンプやデジタル技術が発展し、高性能のハイゲインアンプやモデリングアンプ(プロギタリストのサウンドや有名アンプのサウンドが設定されたもの)が登場すると、アンプにプラグインするだけで、誰でも簡単にいい音が出せるようになった。それはYouTubeのアマチュア動画を見ても一目瞭然だろう。そこには大きな差異は見られず、同じようなサウンドが溢れている。

 また、時代と共にメタルが進化し、より激しい歪みが求められるようになったため、ギター本体の細かなニュアンスが反映されにくくなったことも挙げられる。昨今のメタルサウンドのように、アンプで強烈に歪ませた場合、ギターの木材やパーツがサウンドに反映されるとは言い難い。ちなみに筆者はアンプとPUがサウンドのカギと考えている。
 ハイゲインアンプの強烈な歪みがメタルサウンドの核であると同時に、サウンドを均質化させた、と解釈できるだろう。

 さらに、アンプシミュレーターが普及し、実際にアンプを鳴らさなくてもパソコンで録音ができる環境が整えられている。便利になった一方で、音作りはおろか、音を体感することも少なくなっている。

料理で例えると
 さて、ここでギターサウンドを料理で例えてみよう。
 昔はカレーやシチューをルーから作ることもあったが、今は市販の固形ルーがあり、レトルトや弁当もある。料理をイチから作る機会が減り、多くの食品がインスタント化される傾向にある。そのおかげで、調理の手間を省くことができ、奇妙な味を口にすることは少なくなったが、一方でほとんどが似たような味となり、その違いを感じられなくなった。

 ギターに話を戻すと、最新のアンプを使えば、レトルト食品のように誰でも簡単にいい音を出せるようになったが、その反面オンリーワンのサウンドやスタイルを耳にすることは少なくなったのである。ゆえに、サウンドのファスト化、インスタント化と言えるだろう。

自分だけのサウンドをデザインする
 昔のアンプがよかったと言うつもりはない。今のアンプの方がより幅広いサウンドが作れるし、使い勝手もいい。どのような機材を使うにせよ、新しいアンプやシステムが必要なのではなく、「自分だけのサウンドをデザインする独創的発想」こそが必要なのである。大切なのは、メタルの中でも自分だけのサウンドを主張することで、そういうサウンドからは他者とは違う個性や魅力が感じられる。リスナーはそういう個性を求めているはずだ。

 あれこれ書いたが、「優れたギタリストは自分の音を持っている」というのも事実だ。ザック・ワイルドのトークイベントで、彼は新作のギターとマーシャルJCM800(そこらへんにあるようなごくごく普通の800)をフルテンで鳴らしていたが、それは紛れもなく「ザックの音」だった。結局、最後は「弾き手」ということなのだろう。

0 Comments

Leave a comment

You may also like

Category: メタル