モーターヘッドバンガーズの日記

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モーターヘッド『ORGASMATRON』30周年

モーターヘッド

 モーターヘッドの7thアルバム『Orgasmatron』が1986年にリリースされてから今日8月9日で30年を迎えた。

 その当時、バンドはそれまで契約していたブロンズレコードとの裁判闘争がようやく終わり、3年ぶりのスタジオアルバムとなる本作をリリースした。ブライアン・ロバートソンとフィル・テイラーの脱退で、レミー以外のメンバーの総入れ替えを余儀なくされたが、新たにギタリスト2人を配置することで、ファン拡大を目指した。

 メンバーは、レミー(Vo&B)、フィル・キャンベル(G)、ワーゼル(G)、ピート・ギル(Ds)の4人で、新生モーターヘッドにとって初めてのスタジオアルバムとなった。

サウンド
 本作は、敏腕プロデューサーとして知られるビル・ラズウェルの下で制作されたが、ギターやドラムのサウンドはエフェクト処理が施され、その仕上がりは奇妙な感じだ。轟音感が物足りなく、ガツンと来るインパクトの強さが感じられない。
 1986年のメタルシーンというと、メタリカの『Master Of Puppets』やスレイヤーの『Reign in Blood』がリリースされた年で、スラッシュメタルが台頭し、太くて硬いサウンド:ザクザクとしたギターや激しいツーバスが流行した。それらと比較すると、本作のサウンドは物足りないと言わざるを得ない。レミー本人も本作のミキシングに悔いが残ると述べている。

収録曲
 他方、楽曲はそれまでのモーターヘッドらしさがしっかりと引き継がれている。
 大幅なメンバーチェンジがあったが、曲調はガラリと変わることなく、「Nothing Up My Sleeve」、「Ain't My Crime」、「Claw」、「Mean Machine」、「Ridin' With the Driver」、「Doctor Rock」といったモーターヘッドらしいストレートなファストナンバーが収録された。それだけに、エフェクト処理された人工的なサウンドは違和感がある。

 アルバムにおけるプロデューサーの仕事というのは分かりづらいが、モーターヘッドの場合、『Bastards』や『Sacrifice』をプロデュースしたハワード・ベンソン、『Inferno』や『Bad Magic』をプロデュースしたキャメロン・ウェブと比べると、そのサウンドの違いがよく分かる。彼らはバンドの持ち味をうまく引き出した。

オーガスマトロン
 タイトル曲の「Orgasmatron」はスローテンポで、怪しく不吉なオーラが漂い、権力者を批判する歌詞が特徴だ。本作におけるサウンドの仕上がりはいまいちと書いたが、この曲に関しては、おどろおどろしさがうまく引き出され、ジワジワと迫る恐怖が表現されている。
 orgasmatronとは、女性の背中に電流を流して、オーガズムを起こさせる装置を意味する。おそらく、この曲では「権力者は権力を使うことで興奮を覚える」と揶揄しているのだろう。自伝によると、レミーの造語とのこと。

アートワーク
 本作のアルバムジャケットは、モーターヘッドのアートワークを長年担当しているジョー・ペタグノによるもので、今にも飛び出してきそうな暴走機関車が印象的な仕上がりとなっている。これは当時鉄道模型を集めていたレミーが「ジョー、奇妙と思われるが、俺はファッキングトレインが欲しいんだ。」とオーダーしたそうだ。

 アルバムタイトルと機関車の組み合わせにミスマッチさを感じるかもしないが、当初アルバムタイトルは「Ridin' with the Driver」の予定だったが、「Orgasmatron」に変更され、そのことが作者のジョーに伝わるのが遅れたためだという。
 機関車の顔であるウォーピッグに注目すると、舌と歯が特徴的で、それらは性的イメージを表す。突き出した舌からはヨダレがあふれ、いやらしさが強調されている。そこからorgasmatronという言葉を連想させるのかもしれない。

 このアートワークはバンドのサウンド:金属感、重量感、スピード感、邪悪さ…を見事に描いており、ヘヴィメタルの世界観を表現していると言っても過言ではない。そのため、ファンの間でも人気が高い。ジョー本人もこの作品を気に入っているようで、自身の画集のタイトルと表紙にはこの画が使われている。

 このアートワークから連想されるのは、1920〜30年代に活躍したフランスのポスター作家、カッサンドルの「北方急行」だ。機関車は西洋絵画において長年用いられてきたモチーフのひとつで、中でもカッサンドルは機関車のダイナミックな力強さと巨大さ、スピード感を表現した作風で知られている。メタルのアートワークはそういった流れを汲んでいる。

 それまでアメリカではチャートインすらしたことなかったモーターヘッドだったが、本作は全米チャートに初のチャートイン(157位)を果たし、アメリカのマーケットへの進出につながった。モーターヘッドはトラブルを乗り越え、オーガスマトロンという列車で再出発したのだった。







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